小学校を選ぶに当たって、サドベリースクール、ちょっと気になっていたのですが、東京世田谷のサドベリースクールは費用が高額なのと、
マサチューセッツ州のサドベリー・バレー・スクールみたいに、好きなだけ釣りができるとか、ツリーハウスを作れるとか、自然豊かな場所じゃないと、好きな事も広がらなそうだなあと思って、HPを見ただけになっていました。
今回、この本で世田谷のサドベリースクールが取材されていたので参考になりました。
サドベリー教育とは
サドベリー・バレー・スクールはダニエル・グリーンバーグが開いた学校です。元々はニイルが作ったイギリスのサマーヒルスクールがモデルです。
一言で言うと、教え込みを一切無くした教育。
読み書きすら教えません。
大人が教えなくても、子供が自ら学びたいと思った時に学ぶと、読み書きなんてあっという間に覚えるという理屈。
モンテッソーリ教育でも教え込みをタブーとしていますが、興味の種まきとして紹介することを奨励しています。
サドベリー教育はさらに「押し付けない」を徹底した教育ですね。
グリーンバーグのサドベリースクールで、よく例に上がっているお話があります。
ある子供が釣りが好きで、ず〜っと釣りばかりしていて、親が心配して読み書き教えなくてもいいでしょうかと何度も尋ねるんですけど、学校ではあえて教えない。
その子はそのうち、釣りの本を読めばもっと釣りが上手くなると考え、あっという間に読めるようになった。
教え込むから読めない子ができてしまうのであって、教え込みをなくせば必ずみんな読めるようになると言うのです。
学びたい時はどうするの?
子供達は、授業を受けたいと思ったら「協定」を結びます。その時初めてクラスが生まれます。
ある時には、9〜12歳の12人の子どもたちがグリーンバーグに算数を教えて欲しいとお願いしました。
足し算・引き算から始めて、小学校6年間で習うはずの算数の全内容をたった24週で終えてしまいました。
学ぶ状態になっていない子どもたちの頭に無理やり押し込もうとすると6年かかることが、学ぶ状態になっている子どもたちを相手にすればたった24週で終わるということです。
適当な大人を見つけ、協定さえ締結できれば、定期的に医師や写真家などのプロの指導を受ける事もできます。
サドベリー流「自由」と「民主主義」の原則
ただ好き勝手が許される空間では、お互いの権利が衝突してしまいます。
それを避けるために、お互いの自由を保証するルールが必要になります。
サドベリーバレースクールでは、学校内のルールはもちろん、予算管理、そして学校の職員の採用・解雇に関しても、生徒が大人と同等の権利を持っています。
まるで小さな民主主義社会です。ゆえに、サドベリースクールはデモクラティック・スクール(民主主義の学校)とも呼ばれます。
日本の一条校に きのくに子どもの村学園 がありますが、この学校はニイルのサマーヒルスクールを目指して92年に開校されました。
参考 きのくに子どもの村学園英国のサマーヒルスクールを目指して92年に開校
東京サドベリースクール
世田谷区にあり、4LDK2階建ての外国人向け住宅が校舎となっています。
20畳ほどのリビングにはソファーやピアノが置かれ、多くの子供がここで過ごします。ダイニングルームはミーティングルームとして使用されています。
2階の4部屋はそれぞれ「アートルーム」「おもちゃ部屋」「真ん中の部屋」「事務部屋」として使用されています。
通えるのは幼稚園の年長さんから高校3年生に相当する子供たち。
現在6〜16歳の子供たち17人が一緒に学んでいます。
フリースクールとは?
東京サドベリースクールは、文部科学省が認める正式な学校ではありません。
義務教育期間に相当する子供たちは、公立の学校に籍を置きながら、ここに通っています。
大学への進学を希望する場合は、「高等学校卒業程度認定試験」(旧:大学入学資格検定)を受けることになります。
文部科学省が認めている学校を一条校と言います。
それ以外はフリースクールということになります。
横浜のモンテ小(高根学園)もフリースクールで、子どもたちは、それぞれの地元の小学校に籍を置きながら通うそうです。
参考 マリア・モンテッソーリ・エレメンタリースクール学校法人高根学園
高根学園の幼稚園とエレメンタリースクールは同じ校舎にあります。
プロのミュージシャンが教えに来る
12時にドアベルが鳴りました。プロのミュージシャンが外部アドバイザーとしてやってきました。
これから「おもちゃ部屋」でドラムの個人レッスンが始まるそうです。「おもちゃ部屋」には本格的な電子ドラムのセットが置かれています。
ドラムを習うのは高校1年生の男の子。音楽の作曲家を目指しており、作曲のためにドラムを習ってみたいと言う動機でスタッフと一緒に先生を探したとのこと。
本当は個人レッスンのはずですが、なぜか、小学校低学年位の男の子までついてきました。
リビングで唯一ゲームをしていなかった男の子です。どうやら最近この学校に入ったばかりの子のようです。
アドバイザーが手本を見せ、高校生の男の子に同じように叩かせます。
時々小学生の男の子も叩かせてもらいます。ところがびっくり上手です。
家にドラムセットがあって、習ったことがあるそうです。
高校生のお兄さんがドラムを叩いているときには、それに合わせて近くにあったおもちゃの太鼓をたたきます。即行のセッションです。
レッスン後、高校生が生き生きとした表情で私に話しかけてくれました。
高校生「何か聞きたいことあります?」
著者「じゃあ、この学校の好きなところってどこ?」
高校生「自由な所です」
著者「じゃあ問題点は?」
高校生「勉強しようと思った時、イチから自分でやらなきゃいけないのは結構大変です。」
中学生になってから小学校の算数をやり直すこともあるそうです。
それでも、本人がやる気になった時に集中してやれば、最も効率が良く、効果も高いと言うのが、本場のサドベリーバレースクールと共通する考え方なのです。
感想
高校生:「勉強しようと思った時、イチから自分でやらなきゃいけないのは結構大変です。」
…だよね〜。
「継続は力なり」、これもまた真実。
教え込みはダメだけど、日常生活の中でさりげなく数を数えてみたり、足し算クイズをやったりして算数に触れさせたり、読み聞かせをしたり、子供も気が付かないうちに勉強の基礎(下地)を付けることは親が子供にしてあげられる唯一のプレゼントかもしれません。
どちらにせよ、何事も、バランス感覚が必要ですね。
サドベリースクールは、勉強が出来てしまう子で、小学校の拘束時間が長すぎると感じるお子さんに、好きな事を沢山学んでもらうのに良いかもしれません。
この記事の参考書籍
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