「運動」とは跳び箱や鉄棒、球技といった体育的なものではなく、ものを握ったり、つまんだり、運んだり、ひねったりといった動作のことをここでは表します。単に「動き」と言う表現をすることもあります。
生まれたばかりの赤ちゃんには、自分の意思で行うことのできる運動はほとんどありません。それが幼児期の6年間の間にそれこそ数限りない動きを身に付けていきます。実は、成長の方向である自立とは、この動きを身に付けていくことで構成されている割合が非常に高いのです。つまり、動きが獲得されてくると言う事は、自分の思い通りに動く体ができていくと言う事ですから、1人でできることがどんどん増えていくのです。
この運動の敏感期は、幼児期全般にわたりますが、0歳から3歳位までの運動の敏感期の対象と、3歳から6歳までの対象は異なることを記しておきましょう。
まず0歳から3歳位までの運動の敏感期の対象が、運動機能そのものの発達に向けられます。
運動機能の発達とは、例えば「握る」という動作ができるようになったり、「歩く」という動作が身に付くということです。
これが3歳から6歳になると、0歳から3歳位までに身に付いた運動そのものを洗練したり、調整したりすることに対象が向けられるようになります。
例えば、モンテッソーリ教育では、3歳位までにきれいな色水を、一つのピッチャーからもう一つのピッチャーに注ぐことが出来るようになった子供は、今度は線のついたコップが準備され、ただ単に注ぐだけではなく、線にぴったりになるように注ぐことができるように動きを洗練させます。
これは目で線を捉え、その先のところまで注いだ瞬間に、ピッチャーを持っている手首を戻すという「目と手の協応動作」が要求される運動の調整の活動です。
年齢が低ければ低いほど、つまり、3歳よりも2歳、2歳よりも1歳、1歳よりも0歳の方が、動きの獲得に確実にはっきりとした順番があります。
この順番を知った上で、今、何がこの子の発達なのかをとらえ、それに見合った活動を環境として準備することが重要になってきます。
- 運動の敏感期の表れとしてのいたずら
- 0歳の運動の発達